抜け毛が気になりはじめて鏡を見るたび憂鬱になっていませんか?
そんな薄毛の悩みを解決してくれるのがAGA治療薬です。
AGA治療薬には4種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。
薬剤師として9年間の現場経験を持つわたしが、AGA薬の効果や種類、副作用、選び方などを詳しく解説します。
今回の記事を読むことで、最適な治療薬を選べるようになるでしょう。
正しい知識を身につけて薄毛の悩みから解放されてください。
AGAとは男性型脱毛症のこと
AGA(Androgenetic Alopecia)とは、成人男性に見られる進行性の薄毛症状のことです。
なぜAGAになるのか、背景にある仕組みを詳しく見ていきましょう。
AGAが起こるメカニズム
AGAの発症には男性ホルモンであるテストステロンが深く関わっています。
体内に分泌されたテストステロンは、Ⅱ型5αリダクターゼによってより強力なジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。
Ⅱ型5αリダクターゼとは体内に存在する酵素の一種です。
DHTが毛乳頭細胞にある男性ホルモン受容体と結合すると、髪の毛の成長期を短縮させる信号を出すのです。

髪は成長期、退行期、休止期のサイクルを経て自然に生え変わるのですが、成長期が短縮されると十分に成長する前に抜けてしまいます。
一般的に男性ホルモンは髭や体毛を濃くする方向に働くのですが、前頭部や頭頂部では逆に働きます。
そのため前頭部と頭頂部から薄毛が始まることが多いのです。
遺伝的な要因も大きく影響するため、家族に薄毛の方がいる場合はリスクが上がります。
AGAの薬は4種類ある

AGA治療には現在4つの薬剤が使用されており、それぞれ異なる作用メカニズムで薄毛を改善します。
ミノキシジル
ミノキシジルは頭皮に直接塗布する外用薬で、発毛促進効果が認められています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは「行うよう強く勧める(推奨度A)」に分類されています。
内服薬もありますが、有用性に関して臨床試験がされていないので推奨されていません。
もともと高血圧治療薬として開発された経緯があり、血管拡張作用によって毛根への血流を改善するのが特徴です。
毛母細胞や毛乳頭細胞に酸素と栄養素をしっかりと届けることで、弱った毛根を活性化させます。
さらにミノキシジルは発毛シグナルと呼ばれる物質の産生を促進し、毛母細胞の分裂を活発にする働きもあるのです。
具体的にはインスリン様成長因子(IGF-1)や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などの成長因子を増加させ、髪の毛の周期を正常化させる効果も期待できます。
日本では濃度1%と5%の製剤が承認されており、継続使用することで薄毛の進行を抑制し発毛を促します。
プロペシア(フィナステリド)
プロペシアは有効成分フィナステリドを含む内服薬で、AGAの根本原因にアプローチします。
日本皮膚科学会のガイドラインでは「行うよう強く勧める(推奨度A)」に分類されています。
Ⅱ型5αリダクターゼの働きを阻害することで、テストステロンからジヒドロテストステロン(DHT)への変換を防ぐのが主な作用です。

DHTはAGAの直接的な原因物質で、毛根に作用して成長期を短縮させてしまうものでしたね。
プロペシアによってDHTの産生を抑制することで、乱れたヘアサイクルを正常な状態に戻し、抜け毛を予防できるのです。
ただし短縮されたヘアサイクルが元に戻るまでには時間がかかります。
そのため効果を実感するまでに6か月程度の継続投与が必要となるのです。
現在は先発品のプロペシア以外にもジェネリック医薬品が複数販売されています。
ザガーロ(デュタステリド)
ザガーロは有効成分デュタステリドを含む内服薬で、フィナステリドよりも強力な抜け毛抑制効果を持ちます。
日本皮膚科学会のガイドラインでは「行うよう強く勧める(推奨度A)」に分類されています。
5αリダクターゼⅠ型とⅡ型の両方を阻害できるため、フィナステリドと比べて作用範囲が広いのが特徴です。
増毛効果も約1.6倍高いとされているのです。
M字型の生え際から頭頂部まで幅広い範囲の薄毛に効果が期待でき、症状がある程度進行した方や広範囲の薄毛に悩む方によく処方されます。
軽度の薄毛でも最初からデュタステリドを選ぶケースもあれば、フィナステリドで効果が不十分だった場合に切り替えるケースもあります。
2015年に国内承認を受けた比較的新しい治療薬です。
フロジン(カルプロニウム)
フロジンは塩化カルプロニウム5%を有効成分とする外用薬で、血管拡張作用によって発毛を促します。
頭皮の血流を改善することで毛根に必要な栄養素を届けやすくし、髪の生成を促進するのです。
男性ホルモンとは異なるメカニズムで作用するため、AGA以外の脱毛症にも効果が期待でき、フィナステリドなどの内服薬との併用も推奨されています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは「行ってもよい(推奨度C1)」に分類されており、外用薬のため内服薬と比べて副作用のリスクが低いので安心感もあります。
処方箋が必要な薬剤のため、クリニックでの診察を受けて医師の指導のもとで使用することが必要です。
【種類別】AGA薬の副作用

AGA治療薬は安全性が確認されているものの、それぞれに特有の副作用があります。薬剤ごとの副作用を詳しく見ていきましょう。
ミノキシジル
ミノキシジルの副作用で最も多いのは頭皮の炎症で、かゆみや発赤といった皮膚トラブルが現れます。
皮膚の炎症やかゆみは薬剤や含まれる添加物に対するアレルギー反応が原因です。
症状が軽度なら使用量を減らすか、使用頻度を下げることで改善されるケースが多いです。
また治療開始から2〜4週間後に初期脱毛が起こることがありますが、効果が現れている証拠なので心配する必要はありません。
厚生労働省による新一般用医薬品製造販売後調査報告書での副作用発現率は8.82%と報告されており、多くが皮膚トラブルに関するものでした。
プロペシア(フィナステリド)
フィナステリドは比較的安全性の高い治療薬ですが、性機能に関する副作用が報告されています。
臨床試験では全体の1.1%に性欲減退、0.7%に勃起機能不全の症状が見られ、射精障害や精液量の減少なども起こる可能性があります。
使用成績調査では全体の0.2%に性欲減退と肝機能障害が確認されており、発生頻度自体は高くありません。
副作用は服用開始直後に現れる場合もあれば、長期服用により徐々に出現することもあるので注意は必要です。
体質によって副作用の現れ方に個人差があるため、少しでも異常を感じた場合は速やかに医師に相談することが重要です。
ザガーロ(デュタステリド)
デュタステリドはフィナステリドと似た副作用を持ちますが、やや副作用の発生頻度が高いとされています。
性機能関連では性欲減退(8.3%)や勃起機能不全(10.8%)、射精障害(1.2%)などが報告されており、フィナステリドと比べて頻度がやや高い傾向があります。
そのほかには肝機能障害や抑うつ症状、女性化乳房、乳頭痛、乳房不快感などが見られる場合も。
デュタステリドはフィナステリドより強力な作用を持つため、副作用のリスクも比例して高くなる傾向があるのです。
安心して使用するためには、医師の指示に従って正しく服用し、定期的な経過観察を受けることが不可欠です。
フロジン(カルプロニウム)
カルプロニウムの副作用は皮膚症状とアセチルコリン様作用の2つに分類されます。
皮膚への浸透性が高いことから全身への影響も考慮する必要があるのが特徴です。
皮膚症状では使用部位の赤みやかゆみなどの過敏反応が現れる可能性があります。
アセチルコリン様作用では副交感神経の興奮により、発汗や発熱、悪寒、吐き気などの全身症状が起こることも。
全身の症状は血流が良くなっている入浴後などのタイミングで使用すると現れやすくなるため、少し時間を置いてから使用してください。
外用薬のため副作用の発生頻度は比較的低いとされており、最も多い副作用は局所発汗(1.5%)です。
副作用が現れた場合はすぐに使用を中止し、塗布部位をよく洗い流すことが大切です。
AGA薬にかかる費用は種類によって異なる
AGA治療薬の費用は薬剤の種類によって大きく異なり、月額3,000~20,000円程度の幅があります。
保険適用外の自由診療となるため、クリニックごとに価格設定が異なるのも特徴です。
おおよその相場は以下の通りです。
・フィナステリド(プロペシア):月額3,000〜7,000円
・デュタステリド(ザガーロ):月額5,000〜10,000円
・ミノキシジル外用薬:月額5,000〜10,000円
・フロジン(カルプロニウム):月額4,500〜6,000円
ジェネリック医薬品を選ぶことで先発品の半額程度になることもあります。
一方で、薄毛の進行状況に応じて複数の薬剤を併用する場合は月額10,000〜20,000円程度になり、年間で20万円を超える費用がかかる場合もあります。
繰り返しますが、クリニックにより価格が異なるので確認した上で治療を行いましょう。
AGA薬の種類を選ぶための3ステップ
AGA治療薬を正しく選ぶには、適切な手順で進めることが重要です。
ここでは、効果的な薬剤選択のための3つのステップを解説していきます。
1.解決したい悩みを明確にする
AGA治療薬の選択で最も大切なのは、あなたが抱える具体的な悩みを把握することです。
抜け毛の進行を止めたいのか、それとも毛量を増やしたいのかによって、必要な薬剤が異なります。
抜け毛が多くて困っている場合は、AGAの原因となるDHT(ジヒドロテストステロン)の生成を抑えるフィナステリドやデュタステリドが効果的でしょう。
一方、薄くなった部分に毛を生やしたい場合は、血流を改善して毛母細胞を活性化する「攻めの治療薬」であるミノキシジルがオススメです。
まずは現在の症状と理想の状態を明確にしてから治療を始めましょう。
2.体質に合ったものを選ぶ
AGA治療薬は長期間服用する必要があるため、体質や持病に適した薬剤を選ぶことが不可欠です。
また、AGA治療薬は肝臓で代謝されるため、肝機能に問題がある方は使用に注意が必要です。
現在服用している薬との相互作用も考慮しなければならないので、治療開始前には必ず医師に既往歴や服用中の薬剤を詳しく伝えてください。
お薬手帳を持参すれば、より安全で効果的な治療薬を処方してもらえます。
定期的な血液検査で副作用をチェックしながら、体質に合った薬剤で治療を続けることが重要なのです。
3.予算の範囲内で考える
AGA治療薬は自由診療のため保険が適用されず、長期間にわたって費用がかかります。
治療の効果を実感するには最低でも6か月以上の継続が必要なため、無理のない予算を設定する必要があります。
たとえばフィナステリドは月額3,000~7,000円程度、ミノキシジル外用薬は月額5,000~10,000円程度が相場です。
両方を併用する場合は月額1万円以上かかることもあります。
クリニックによって価格設定が大きく異なるため、複数のクリニックで費用を比較することをおすすめします。
治療開始前に年間の治療費をシミュレーションし、家計に無理のない範囲で継続できる薬剤を選択してください。
費用面で治療を途中で断念することのないよう、現実的な予算計画を立てることが大切です。
まとめ|AGA薬の種類を理解して自分に合ったものを選ぼう
AGA治療薬は4つの主要な種類があり、それぞれ異なる作用メカニズムで薄毛にアプローチします。
フィナステリドやデュタステリドなどの内服薬はDHTの生成を抑制して抜け毛を防ぎ、ミノキシジルやカルプロニウムなどの外用薬は血流改善によって発毛を促進します。
治療薬選択では、まず解決したい悩みを明確にし、体質や持病に適した薬剤を選ぶことが重要です。
副作用のリスクを理解した上で、継続可能な予算範囲内で治療を計画しましょう。
効果を実感するには最低6か月以上の継続が必要なため、医師と相談しながら自分に最適な治療薬を見つけることが薄毛改善への近道です。